外国人が確定申告をしないとビザ更新で「消極的評価」を受ける?
― 住民税・所得税と在留資格の知られざる関係 ―
「会社員だから、自分には確定申告は関係ないと思っていました」 外国人のお客様から、このようなご相談をいただく機会が少なくありません。
確かに、日本で働くすべての外国人に確定申告の義務があるわけではありません。しかし、本来は申告義務があるにもかかわらず手続きを怠り、結果として所得税や住民税の納付に問題が生じている場合、在留資格(ビザ)の更新や変更の審査において、非常に不利な評価を受けるリスクがあります。
出入国在留管理庁が公表している「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン(令和2年改訂版)」では、納税や年金・医療保険といった公的義務を適正に履行していることが、許可・不許可を判断する上での重要な考慮要素として位置づけられています。もしこれらを怠っている場合には、「消極的な要素として評価される」と明確に規定されているのです。
一般的に確定申告が必要になるのはどんなケースか
「外国人だから確定申告が必要」というルールはありません。日本の税法は国籍に関係なく一律に適用されます。 たとえば、会社員として1社のみに勤務し、毎月の給与から税金が天引きされ、勤務先で「年末調整」が正しく行われているのであれば、原則として確定申告は不要です。
一方で、次のようなケースに該当する場合は、個人で確定申告を行う義務が生じる可能性が高くなります。
- 本業のほかに副業やアルバイトの収入があり、その所得(利益)が年間20万円を超えている
- 個人事業主やフリーランスとして活動している
- 複数の会社から掛け持ちで給与を受け取っている
- 会社の給与収入が年間2,000万円を超えている
- 不動産収入や海外での所得など、日本で申告対象となる所得がある
注意したいのは、所得税の確定申告が不要なケース(副業の利益が20万円以下など)であっても、お住まいの市区町村に対する「住民税の申告」は別途必要になる場合がある点です。これらを「よく分からないから」と放置してしまうと、後になって追徴課税や延滞税が発生するだけでなく、ビザの審査にも直撃することになります。
確定申告の有無は、なぜ入管に把握されるのか
「確定申告をしていないことが、なぜ入管にばれるのか」と疑問に思う方もいるかもしれません。 ここは誤解されやすい点ですが、「確定申告をしていない=即座に更新不許可」という単純な仕組みではありません。入管が見ているのは、あくまで「日本の法令を遵守し、公的義務を適切に履行しているか」という実態です。
現在、就労ビザ(技術・人文知識・国際業務など)や身分系のビザの更新申請では、市区町村が発行する住民税の「課税(非課税)証明書」および「納税証明書」の提出が必須となっています。 確定申告を正しく行っていないと、これらの証明書が「未申告」のために発行できなかったり、実際の所得と乖離した不整合な内容で発行されたりします。入管はこれらの提出書類を通じて、申請人の所得や納税の遅延・未納の有無を確実に把握しているのです。
在留資格の更新審査は、単に「現在仕事をしているから許可される」というものではありません。税金や社会保険を含めた、日本での生活全体の適法性が総合的に判断される制度であることを強く意識する必要があります。
過去に申告していなかった場合のリカバリー
では、過去に確定申告や納税をしていない期間があった場合、もう手遅れなのでしょうか。 決してそんなことはありません。
気付いた時点で税務署へ赴き、「期限後申告」を行って不足している税金や延滞税をすべて納付すれば、その誠実な対応は審査において「改善事情」として考慮される可能性があります。何もしないまま申請書を出すよりも、未履行だった義務を自ら適正に解消してから更新申請に臨む方が、許可の可能性が高まるのは間違いありません。
なお、具体的な収入額をもとに「自分に確定申告の義務があるかどうか」を個別に判断することや、実際の税務申告を代理する業務は、税理士法によって税理士の独占業務と定められています。私たち行政書士が個別の税務相談に乗ることはできませんが、ビザ申請との関係性を踏まえ、「現在の納税状況が審査にどう影響するか」「入管に対してどのような説明理由書や証明書類を準備すべきか」について、専門的な見地から助言を行うことは可能です。
まとめ
在留資格の更新においては、収入の金額そのものだけでなく、その収入を適正に申告し、納税義務を誠実に果たしているかという「法令を守る姿勢」が厳しく見られます。
更新期限が直前に迫ってから慌てて過去数年分をまとめて納税するよりも、日頃から自身の納税状況を正しく管理しておくことが重要です。もし「過去の申告漏れがあるかもしれない」と不安を感じた場合は、まずは速やかに税理士などの税務の専門家へご相談いただき、正しく手続きを済ませた上で、ビザへの影響や対策について行政書士へご相談いただくことを強くおすすめします。
※本記事は掲載日時点の法令・制度および公表情報に基づいて作成しています。法改正や運用変更等により内容が変更される場合があります。具体的な手続については、最新の法令・出入国在留管理庁の公表情報をご確認いただくか、当事務所等の専門家へご相談ください。


