「在留カードは確認したのに…」

外国人採用で企業が見落としやすい“就労可否”のポイント

1.はじめに:「在留カードを確認したから大丈夫」ではない時代に

外国人採用のご相談を受けていると、企業担当者の方から、 「在留カードはしっかり確認しました」 というお話をよく伺います。もちろん、それ自体はコンプライアンスの第一歩として非常に重要です。

しかし実務では、「在留カードを確認していたのに、実は就労内容に問題があった」というケースが少なくありません。

最近は、外国人雇用が一般化した一方で、

  • 業務内容
  • 資格外活動(就労時間)
  • 在留期限
  • 実際の働き方

について、企業側の確認責任・管理責任も以前より厳しく重視される傾向があります。 今回は、外国人採用時に企業が見落としやすいポイントを、実務目線で整理します。

2.「働ける在留資格」=「どんな仕事でもできる」ではない

まず大前提として押さえておきたいのが、在留カードに就労制限がない(または就労不可ではない)ように見えても、「その在留資格で認められた活動範囲内か」は全く別問題であるということです。

例えば、オフィスワークやエンジニア職で最も一般的な「技術・人文知識・国際業務(技人国)」の在留資格では、以下のような専門的知識・技術を使う業務が前提となります。

  • エンジニア・IT人材
  • 企画・営業
  • 通訳・翻訳
  • 経理・財務
  • マーケティング

そのため、「技人国ビザを持っているから、とりあえず人手不足の店舗で接客中心に配置しよう」という形は、在留資格の範囲外の活動(不法就労)とみなされるリスクが非常に高く、厳禁です。

3.実務で実際によくある「3つの見落とし」

① 在留期限切れに気づいていなかった

これはうっかりミスも含めて意外と多い事例です。特に「更新申請中」や「中途採用での転職直後」など、担当者が状況を正確に把握できていないケースがあります。

なお、在留期間満了日までに更新申請を済ませていれば、結果が出るか、または満了日から2ヶ月が経過する日までは、特例(特例期間)として従前通り働くことができます。ただし、企業としては在留カード裏面の「在留資格変更許可申請中」等のスタンプや、受領印のある申請控を必ず確認しておく必要があります。カードの表面に記載された期限だけを見て「切れているからダメだ」と慌てたり、逆に申請の有無を確認せずに放置したりするのはNGです。

② 「資格外活動許可」のルールを誤解している

留学生や家族滞在ビザを持つ外国人の場合、「資格外活動許可」を得ることで一定範囲のアルバイトが認められます。ただし、原則として「週28時間以内」という厳格な制限があります。

実務で最も盲点となるのが「他社とのダブルワーク」です。労働時間はすべての勤務先の合算で週28時間以内でなければなりません。

  • 「自社では週15時間だから大丈夫」
  • 「本人が『他では働いていない』と言っていたから管理していない」

これらは企業側にとって非常に危険な運用です。シフトの合算ミスや繁忙期の超過も含め、企業側が主体的に労働時間を管理する必要があります。

③ 「実際の仕事内容」が在留資格とズレている

最近、入管当局によるチェックも含めて特に厳しくなっているのがこのポイントです。

  • 営業職で採用したはずが、実際は倉庫でのピッキングや梱包作業ばかり
  • 通訳・翻訳で採用したはずが、実際は店舗でのレジ打ちや接客のみ
  • IT人材として採用したはずが、実際はデータ入力などの単純作業中心

入管実務や万が一の入国在留管理庁による調査では、「雇用契約書に何が書いてあるか」という書面上の文言だけでなく、「現場で実際に何をしているか(実態)」が重視されます。

万が一、在留資格の範囲外の仕事をさせていた場合、悪意がなかったとしても、企業側が「不法就労助長罪(3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方)」に問われ、重い罰則や社会的信用の失墜を招くリスクがあります。まさに「知らなかった」では済まない時代です。

4.私自身、経営者として感じること

私は企業経営にも長く携わっていますが、現場の実態を見ると、「悪意を持って違反している」のではなく、「法律や制度がよく分からないまま、これまでの慣習で運用されている」ケースが非常に多いと感じています。

特に中小企業においては、

  • 採用担当が他の業務(総務・経理など)を兼務している
  • 人手不足で、とにかく現場のシフトを回すことが最優先になっている

という状況も多く、外国人雇用の法的なアップデートや細かい就労管理にまで手が回らない会社も少なくありません。

しかし、前述の通りコンプライアンス違反のリスクは年々高まっています。だからこそ、「採用時(入り口)だけチェックして終わり」にするのではなく、配属後や日々の運用のなかでも在留資格との整合性を定期的に確認する体制が不可欠になっています。

5.企業側が今すぐ取り組むべき3つのアクション

① 「在留カードを見る」だけで終わらせない

採用時や定期チェックの際は、カードの有効性だけでなく、以下の要素を必ず「セット」で確認・記録してください。

  • 現在の在留資格(業務内容とマッチしているか)
  • 在留期限(特例期間中の場合は申請の証明があるか)
  • 資格外活動許可の有無と、他社も含めた総労働時間

② 配置転換・配属変更時こそリーガルチェックを行う

現場の急な人手不足などで、「一時的に別部署をヘルプしてもらう」といった配置転換が行われることがあります。しかし、この配置転換によって、当初入管に申請していた職務内容と「実態」がズレてしまうケースが多発しています。職務内容が変わる際は、必ず事前に在留資格の範囲内かどうかを確認してください。

③ 手続きの有無だけでなく「普段からの管理」を仕組み化する

在留期間の更新直前になって慌てて書類を作り、業務実態との乖離に気づく会社は少なくありません。

  • 業務内容の軽微な変更
  • 勤務地の変更(転勤など)
  • 雇用形態の変更(アルバイトから正社員へ、など)

これらが発生した際は、日常的に情報を整理し、必要に応じてハローワークへの外国人雇用状況届出だけでなく、入管への「所属機関に関する届出(移籍・契約変更の届出)」の提出・指導を速やかに行えるよう仕組み化しておくことが重要です。

6.まとめ:「採用できた」より「適切に運用できているか」の時代へ

外国人雇用においては、「在留カードを確認したから一安心」と言える時代は終わりました。最近は特に、「実際の業務内容」「就労時間(週28時間)」「現場での配置実態」「継続的な労務管理」まで一貫して適正であるかが厳しく見られています。

そして実務において最も恐ろしいのは、「よく分からないまま運用していた結果、気づけば不法就労を助長していた」という、悪意のないコンプライアンス違反です。

問題が起きてから対処するのでは手遅れになります。「運用の段階からルールを整理し、リスクを未然に防ぐ体制を作る」ことが、これからの外国人雇用においてますます重要になっていくでしょう。

外国人雇用管理のご相談について

当事務所では、外国人雇用に関するコンプライアンス体制の手助けとして、以下のサポートを行っております。

  • 外国人採用前の在留資格(ビザ)該当性チェック
  • 在留カード確認・社内管理体制の構築支援
  • 技人国ビザ等の業務内容該当性レビュー
  • 在留期間更新時のリスク診断
  • 実際の働き方と在留資格の整合性確認(業務内容レビュー)

特に最近は、「採用してしばらく経つが、今の現場の働き方で本当に法的に大丈夫か不安になった」という経営者様・人事担当者様からの労務診断のご相談が増えています。

外国人雇用を“採用して終わり”にするのではなく、“継続して安心して運用できる体制”へ整えていきたい企業様は、どうぞお気軽にご相談ください。