外国人社員が副業を始めたいと言ってきたら?
― 会社が知っておくべき在留資格の注意点 ―
はじめに
近年は働き方改革の影響もあり、副業を認める企業が増えてきました。
そのため、
- 「休日にアルバイトをしたい」
- 「ネットショップを運営したい」
- 「SNSで収益化したい」
など、外国人社員から副業について相談を受けるケースも珍しくありません。
日本人社員であれば、会社の就業規則の範囲で考えることが一般的ですが、外国人の場合は少し事情が異なります。
なぜなら、副業の内容によっては在留資格(ビザ)上の問題が生じる可能性があるためです。
今回は、外国人社員が副業を希望した場合に会社が知っておきたいポイントについて解説します。
日本人と外国人では「副業」の意味が異なる
まず理解しておきたいのは、日本人と外国人では副業に関する考え方が異なるということです。
日本人の場合、副業が認められるかどうかは主に労働契約や就業規則の問題です。
一方で外国人の場合は、それに加えて在留資格の範囲内で活動しているかどうかが極めて重要になります。
会社が就業規則で副業を認めていたとしても、在留資格上認められない活動を行えば、本人にとって不法就労となるなど大きなリスクとなる可能性があります。
「技術・人文知識・国際業務」の場合
多くの企業で採用されている外国人社員は、「技術・人文知識・国際業務(以下、技人国)」の在留資格を持っています。
この在留資格は、許可された専門的・技術的な業務内容の範囲で就労することを前提としています。
例えば、
- エンジニア
- 経理担当
- 営業職
- 通訳・翻訳
- 海外取引担当
などが該当します。
一方で、
- 飲食店での接客アルバイト
- コンビニでのアルバイト
- 倉庫内での単純作業
などは、一般的にはこの在留資格で認められている活動には該当しません。そのため、本業とは別にアルバイトを行う場合には強い注意が必要です。
「少しだけだから大丈夫」は危険
実務上よくあるのが、
- 「週に数時間だけだから問題ないと思った」
- 「知人の店を手伝っただけ(無報酬だからセーフだと思った)」
- 「休日だけ働いていた」
というケースです。
しかし、在留資格の観点では、勤務時間の長短や報酬の有無よりも「活動内容」が重視されます。 仮に「お手伝い」という名目で無報酬であったとしても、実質的な労働とみなされれば不法就労(資格外活動違反)を問われるケースがあります。
本人に悪気がなくても、許可されていない活動と判断されれば、将来の更新申請や永住申請の際に不許可となるリスクがあるため注意が必要です。
SNSやネット販売はどう考えるべき?
最近増えているのが、
- YouTube、Instagram、TikTokなどの動画配信・SNS活動
- ネットショップ運営(EC販売)
などによる収益活動です。
これらについては活動内容や収益の発生状況によって判断が異なります。趣味の範囲で、収益が発生していない、あるいはごく少額の不用品処分(メルカリ等)程度であれば問題にならないケースが多いでしょう。
しかし、広告収入を継続的に得ている場合や、仕入れを行って本格的にネットショップを運営している場合は「業(ビジネス)」とみなされます。 「技人国」のビザのまま、個人でこうしたビジネスを行うことは原則として認められていません。
ケースによって判断が分かれるため、個別の確認をおすすめします。
資格外活動許可の要件と副業のルール
副業の内容が現在の在留資格の範囲を超えてしまう場合、原則として「資格外活動許可」の取得が必要となります。
ここで会社として知っておくべき重要なポイントは、「どのような形態で副業を行うか」によってルールや難易度が全く異なるという点です。
1.別会社でアルバイト(単純労働など)をする場合
フルタイムで働く「技人国」などの就労ビザを持つ外国人社員が、コンビニや飲食店などでアルバイトをするために資格外活動許可(個別の許可)を得ることは、実務上極めて困難であり、原則として許可されません。 「許可を取ればアルバイトができる」わけではないため注意してください。
2.別会社で専門職としての副業(複業)を行う場合
別の会社で「エンジニア」や「通訳」など、本人が現在持っている在留資格の範囲内の業務を行う場合は、資格外活動許可は不要です。 ただし、副業先の会社でも本人の学歴や職歴にマッチした業務内容である必要があり、会社側としては「所属機関に関する届出」の提出などが必要になります。
許可が必要な活動であるにもかかわらず、許可を受けずに(あるいは許可が下りないまま)活動を始めてしまうと、本人だけでなく、副業先の企業も「不法就労助長罪」に問われるリスクがあります。副業を検討する際には、事前に専門家へ確認することが重要です。
会社として確認しておきたいポイント
外国人社員から副業について相談を受けた場合には、少なくとも次の点を確認しておくとよいでしょう。
- どのような仕事を行うのか(具体的な業務内容)
- 雇用契約なのか、個人事業(業務委託など)なのか
- 報酬は発生するのか
- 継続的な活動なのか
- 本業に支障はないか
- 在留資格との関係に問題はないか
特に、「アルバイト」や「副業」という言葉だけで判断せず、「どこで、誰と、どのような業務を行うのか」を詳細に確認することが重要です。
まとめ
外国人社員の副業は、日本人社員と同じ感覚で考えることはできません。
会社の就業規則だけでなく、在留資格との関係も厳密に確認する必要があります。副業の内容によっては問題なく行えるケースもありますが、場合によっては資格外活動許可が必要となることや、そもそも在留資格の制度上、認められないケースも多々あります。
本人にとっても会社にとっても思わぬトラブルを防ぐため、副業の相談を受けた際には慎重に確認することをおすすめします。
当事務所では、外国人雇用に関するご相談や在留資格に関するご相談を承っております。副業や兼業に関する判断に迷われた場合も、お気軽にご相談ください。
※本記事は掲載日時点の法令・制度および公表情報に基づいて作成しています。法改正や運用変更等により内容が変更される場合がありますので、具体的な手続については最新情報をご確認ください。


