配偶者ビザで働ける範囲は?
意外と多い誤解と、実務で盲点になる「盲点」を解説します
「配偶者ビザを持っていれば、どんな仕事でも制限なく自由に働けるんですよね?」
当事務所へご相談にお越しになる方からも、このようなご質問をよくいただきます。
結論からお伝えすると、いわゆる配偶者ビザ(「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」)の在留資格をお持ちであれば、原則として就労内容に制限はありません。サラリーマンとして企業で働くことはもちろん、ご自身でビジネスを起こすことも可能です。
しかし、この「配偶者ビザなら自由」という言葉のイメージが先行するあまり、実務の上では深刻な誤解や、人生の転機における手続きの漏れが生じやすいのも事実です。
今回は、配偶者ビザで認められる就労の範囲と、実は多くの人が見落としがちな「実務上の盲点」について、分かりやすく解説します。
そもそも「配偶者ビザ」とは? 似ているようで違う在留資格
一般的に「配偶者ビザ」と一括りにされがちですが、法律上の在留資格としては主に以下の種類に分かれます。
- 日本人の配偶者等(日本人の夫や妻)
- 永住者の配偶者等(永住者の夫や妻)
これらのビザは、日本での「身分や地位」に着目して与えられるものです。そのため、いわゆる就労ビザ(技術・人文知識・国際業務など)のように、「学歴や職歴と、仕事内容が一致していなければならない」といった職種の縛りがありません。
法律の枠内であれば、パートやアルバイト、会社経営、個人事業主(フリーランス)など、どのような形態であっても自分の意志で仕事を選ぶことができます。
【盲点その1】「家族滞在ビザ」との混同による不法就労リスク
実務で最も注意しなければならないのが、「家族滞在」という別の在留資格との混同です。
例えば、日本で働いている外国籍(就労ビザ)の方が結婚し、本国から配偶者を呼び寄せるケースがあります。この場合、配偶者が取得するのは「配偶者ビザ」ではなく「家族滞在」という在留資格になります。
同じ「夫や妻」としてのビザであっても、ここには決定的な違いがあります。
- 配偶者ビザ(日本人・永住者の配偶者等): 就労の制限なし
- 家族滞在ビザ: 原則として働くことはできない(就労不可)
家族滞在ビザの方が働くためには、事前に入国管理局(入管)へ申請し、「資格外活動許可」を得る必要があります。さらに、許可が出たとしても「原則として週28時間以内」という厳格な時間制限を守らなければなりません(なお、キャバクラやスナック、性風俗関連など、風俗営業に該当する仕事への従事は一律で禁止されています)。
この違いを知らないまま、「配偶者だから働いても大丈夫だろう」と思い込んで時間制限を超えて働いてしまうと、ご本人が不法就労となるだけでなく、雇っている会社側も「不法就労助長罪」という重いペナルティを科されるリスクがあります。
【盲点その2】転職・就職時に発生しやすい「会社側との認識のズレ」
「日本人の配偶者等」などのビザを持っている方が転職をしたり、新しく会社に雇われたりする場合、就労ビザのように「在留資格の変更手続き」を行う必要はありません。また、就労ビザの外国籍の方に義務付けられている「勤務先が変わったことの入管への届出(所属機関に関する届出)」も、配偶者ビザの方には義務付けられていません。転職時の入管手続きという点では、非常に自由度が高いのが特徴です。
しかし、実務においてここで別の問題が発生することがあります。それは「採用する会社側の知識不足によるトラブル」です。
企業の中には、「外国人を雇う=就労ビザの手続き(技術・人文知識・国際業務などへの変更)が必要」と盲信している担当者が少なくありません。そのため、配偶者ビザを持っているにもかかわらず、会社から「ビザの変更手続きをしてください」「今のビザではうちの職種では雇えません」などと言われ、困惑して当事務所に相談に来られる方が後を絶たないのです。
配偶者ビザであれば、在留カードの表面の就労制限の欄に「就労制限なし」と明確に記載されています。企業側との無用なトラブルを防ぎ、スムーズに働き始めるためには、自身が持つビザの優位性を正しく説明できる知識を持っておくことが大切です。
結婚生活の「実態」が変わったときに課される本当の義務
配偶者ビザは、転職時の届出義務はないものの、「夫婦関係に変化があったとき」には非常に厳格な届出義務が課されます。ここが最大の要注意ポイントです。
万が一、離婚や死別によって夫婦関係が終了した場合、その日から14日以内に、入管へ「配偶者に関する届出」を提出しなければならないと法律(入管法)で定められています。
勤務先が変わっても入管へ報告する必要はありませんが、離婚・死別の報告を怠ると、過料(罰金のようなもの)を科されたり、将来の在留資格の手続きで致命的なマイナス評価を受けたりします。
また、正当な理由がないにもかかわらず、離婚・死別後、あるいは婚姻関係が破綻して実態がなくなってから「配偶者としての活動」を6ヶ月以上行わずに日本に滞在し続けていると、在留資格の取消対象になります。
もし離婚や死別を経た後も引き続き日本に残り、仕事を続けたいと考えている場合は、この14日以内の届出を確実に行った上で、速やかに「定住者」や「就労ビザ」など、ご自身の状況に合わせた別の在留資格への変更手続きを検討しなければなりません。
まとめ:大切な在留資格を守るために
「配偶者ビザだから、仕事も手続きも全部自由」と捉えてしまうのは、一歩間違えると将来の日本での生活を脅かすリスクを孕んでいます。
まずはご自身、あるいはこれから雇おうとしている従業員の方の在留カードの「在留資格」の欄をしっかりと確認し、それが「日本人の配偶者等」なのか「家族滞在」なのかを正しく把握することがすべての第一歩です。
在留資格に関する制度は、一見シンプルに見えても、実務においては個々の生活状況や手続きのタイミングによって判断が大きく分かれます。「少しでも不安な点がある」「自分の場合はどうなるのだろう」と感じられたら、トラブルに発展する前に、ぜひ一度当事務所までお気軽にご相談ください。
外国人の皆様が、一時の誤解で不利益を被ることなく、安心して日本での生活や就労を続けられるよう、実務の観点から親身になってサポートいたします。
※本記事は掲載日時点の法令・制度および公表情報に基づいて作成しています。法改正や運用変更等により内容が変更される場合があります。具体的な手続については、最新の法令・出入国在留管理庁の公表情報をご確認いただくか、当事務所等の専門家へご相談ください。


