「怖くて動けない」ほど損をする
― オーバーステイ、自ら動けば選択肢が広がる可能性があります ―
約8万人の不法残留者──その多くが「どう動けばいいかわからない」
出入国在留管理庁 の統計によると、令和6年7月1日時点における日本国内の不法残留者数は77,935人と公表されています。
不法残留(いわゆるオーバーステイ)の状態になっている方の中には、
- 「入管に行ったらすぐ収容されるのではないか」
- 「もう日本にいられないのではないか」
- 「相談したら逆に危険なのではないか」
といった不安から、誰にも相談できずに時間だけが過ぎてしまっているケースも少なくありません。
しかし実務上は、
“早い段階で、自ら動いたかどうか”
によって、その後に取り得る選択肢が変わってくる場合があります。
この記事では、
- オーバーステイとは何か
- 自ら出頭する意味
- 出国命令制度
- 在留特別許可
- 実務上注意すべき点
を、制度ベースで整理していきます。
オーバーステイ(不法残留)とは?
在留カード等に記載された在留期間を過ぎても、
- 在留期間更新許可申請
- 在留資格変更許可申請
などを行わずに日本に滞在し続けることを、一般的に「オーバーステイ(不法残留)」と呼びます。
入管法上は「不法残留」とされ、退去強制事由の一つに該当します。
また、不法残留には刑事罰が定められており、
「3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金」
の対象となる可能性があります。 (出入国管理及び難民認定法第70条)
「発覚するまで待つ」と、選択肢が狭くなることも
オーバーステイが発覚した場合、原則として退去強制手続の対象となります。
退去強制により出国した場合は、原則として5年間、日本への上陸が拒否される可能性があります。
さらに、過去に退去強制歴等がある場合には、より長期間の上陸拒否期間が設定されるケースもあります。
一方で、
「自ら出入国在留管理官署へ出頭したか」
は、その後の制度選択に影響する可能性があります。
「出国命令制度」とは?
一定の要件を満たす場合、退去強制手続ではなく、
「出国命令制度」の対象となる可能性があります。
出国命令制度を利用して出国した場合、上陸拒否期間は原則1年となります。
これは、将来的に、
- 就労ビザ
- 配偶者ビザ
- 留学
- 家族滞在
などで再来日を希望する方にとって、大きな違いになる可能性があります。
出国命令制度の主な要件
出国命令制度には、主に次のような要件があります。
- 不法残留以外の重大な退去強制事由に該当しないこと
- 窃盗等一定の犯罪歴がないこと
- 過去に退去強制や出国命令による出国歴がないこと
- 速やかに出国する意思を有していること
などです。
また、2024年の入管法改正では、一定の場合について、違反調査開始後であっても、入国審査官による違反認定通知前に帰国意思を示したケースが、出国命令制度の対象となり得るよう制度の見直しが行われました。
ただし、
「摘発後なら必ず出国命令になる」
というわけではなく、個別事情による判断となります。
日本に残る道としての「在留特別許可」
一方、
- 日本人配偶者がいる
- 日本で育っている子どもがいる
- 長期間日本で生活している
など、
「帰国ではなく、日本での在留継続を希望する」ケースでは、「在留特別許可」が問題となることがあります。
在留特別許可とは?
在留特別許可とは、本来は退去強制事由に該当する外国人について、法務大臣が個別事情を考慮し、特別に在留を認める制度です。
ただし、
「一定条件を満たせば必ず許可される制度」ではありません。
あくまで個別事情を総合的に考慮して判断されます。
ガイドラインで示されている「積極要素」
出入国在留管理庁 のガイドラインでは、在留特別許可の判断要素として、例えば以下のような事情が示されています。
- 自ら出入国在留管理官署に出頭申告したこと
- 日本人または特別永住者との安定した婚姻関係
- 日本で監護養育している子どもの存在
- 長期間の日本在留と定着性
などです。
つまり、
「自ら出頭したこと」は、ガイドライン上、積極的事情の一つとして考慮される可能性があります。
一方で「長期間の不法滞在」は不利要素
逆に、
- 長期間の不法残留
- 虚偽申告
- 不法就労
- 刑事事件
などは、消極要素として評価され得ます。
特に、「時間が経てば何とかなる」という状況ではなく、
不法残留期間が長期化するほど、在留管理秩序侵害の程度が大きいと評価される可能性があります。
「在留期限を少し過ぎただけ」の場合
実務上は、在留期間満了後間もない事情によって、更新申請等が受理されるケースもあります。
もっとも、
- 明確な日数基準
- 必ず受理される条件
が公表されているわけではなく、個別事情による判断となります。
例えば、
- 本人が期限を誤認していた事情
- 必要書類準備状況
- 速やかな相談・出頭
などが考慮される場合があります。
そのため、
「数日だから必ず大丈夫」と考えるのではなく、できる限り早い段階で専門家へ相談することが重要です。
オーバーステイ状態で特に注意すべきこと
① 何もしないまま放置する
もっともリスクが高いのが、「怖くて何もできず時間だけが過ぎる」ケースです。
時間経過によって、
- 出国命令制度
- 在留特別許可
- 更新可能性
などに影響する場合があります。
② 不法就労を続ける
資格外活動や不法就労は、別の違反事由として扱われる可能性があります。
また、在留特別許可の判断でも、消極事情として考慮されることがあります。
③ 虚偽説明をする
入管手続における虚偽説明や虚偽資料提出は、極めて慎重に見られるポイントです。
「何とかごまかせば大丈夫」という考え方は非常に危険です。
こんな方は、早めの相談をご検討ください
- 気づいたら在留期限を過ぎていた
- 更新申請できるか不安
- 日本人配偶者や子どもがいる
- 将来的に再来日を希望している
- 入管に行くのが怖くて動けない
オーバーステイ問題は、「今の状況で、何が選択可能なのか」を整理することが重要です。
実際には、
- 出国命令制度の可能性
- 在留特別許可の可能性
- 更新申請余地
- 必要資料
など、個別事情によって対応が大きく変わります。
当事務所では、
- オーバーステイに関する初期相談
- 在留特別許可の可能性検討
- 出国命令制度への対応整理
- 日本人配偶者・家族事情の整理
- 更新可能性の確認
などを行っております。
特に、「何から始めればいいかわからない」という段階のご相談は少なくありません。
不安から動けなくなる前に、まずは現在の状況を整理することが、今後の選択肢を考える第一歩になるかもしれません。


