「派遣型・客先常駐型」の技人国が厳しくなっている?

2026年以降の審査実務で企業が注意すべきポイント

はじめに

「以前は同じ内容で許可されたのに、今回は詳しい説明を求められた」

最近、IT業界や通訳業務を中心に、派遣型や客先常駐型の「技術・人文知識・国際業務(技人国)」ビザで追加説明を求められたというご相談が増えています。

特に、

  • SES契約(※1)
  • 客先常駐
  • 派遣形態
  • 実態が派遣と疑われかねない請負契約

などのケースでは、出入国在留管理庁が以前よりも「就労の実態確認」を慎重に行っている印象があります。

もちろん、「派遣や客先常駐だから不許可になる」というわけではありません。しかし現在は、

  • 誰の指揮命令を受けるのか
  • 実際にどこで働くのか
  • 専門業務と言えるのか(本人の専攻と一致しているか)
  • 契約形態と実態が一致しているか

などを、より具体的に確認されるケースが見られます。 今回は、「派遣型・客先常駐型の技人国ビザ」で企業が注意すべきポイントを整理します。

(※1)【注釈:SES(システム・エンジニアリング・サービス)とは】 ソフトウェアやシステムの開発・保守などのために、エンジニアの技術力を提供する委託契約(準委任契約)の一種です。エンジニアは「客先(発注元)」に常駐して作業することが多いですが、指揮命令権は客先ではなく、あくまで「雇用元(受注企業)」にあります。 客先が直接エンジニアに指示を出すと、法律上「偽装請負」として違法になるため、ビザの審査でもその実態が厳しく確認されます。


そもそも「派遣型の技人国」は違法なのか?

結論からいうと、派遣形態そのものが直ちに違法というわけではありません。 「技術・人文知識・国際業務」の在留資格であっても、労働者派遣法に基づく適正な労働者派遣契約による就労は、制度上認められています。

ただし当然ながら、

  • 派遣元企業(適切な許可や管理体制があるか)
  • 派遣先の業務内容
  • 本人の学歴・職歴

が、在留資格の要件にきちんと適合している必要があります。


最近、なぜ厳しく見られているのか?

背景として大きいのは、「名目は専門職だが、実態は単純労働(現場作業)ではないか」という懸念です。

特に近年、

  • 客先常駐型SES
  • 通訳兼接客
  • 店舗支援
  • ヘルプデスク

などの業務において、「実際には専門知識を必要としない、誰でもできる業務ではないか」という観点から、入管側の確認が強まっている印象があります。


実務で追加説明が入りやすいケース

① 派遣先が申請時点で未確定

以前は比較的柔軟に運用されていたケースでも、最近は派遣先の名称、業務場所、具体的な業務内容について説明を求められるケースが増えています。特に、「案件が決まり次第アサイン予定」という説明だけでは、活動実態の確実性がないと判断され、説明不足になることがあります。

② SESや請負契約なのに業務内容が曖昧

例えば、「システム支援業務」「IT関連業務全般」「運用対応」といった大まかな記載だけでは、専門性が伝わりにくくなっています。そのため現在は、設計、開発、要件定義、保守の範囲、使用する技術にいたるまで、具体的な提示を求められることがあります。

③ 実態が「現場作業中心」になっている

ここはかなり注意が必要です。例えば、PCの設置だけ、ケーブルの配線だけ、マニュアル通りの定型的な対応、監視業務だけなど、専門性の説明が難しい業務の割合が高い場合です。 技人国ビザでは、単に専門的な知識を要する業務であるかだけでなく、「本人の学歴や職歴と、実際の業務内容に密接な関連性があること」が極めて重要になります。


「請負(SES)契約だから安心」とは限らない

ここは実務上、かなり誤解が多いポイントです。 企業側で、「契約書が請負(SES)だから、派遣のような厳しいビザ審査は関係ない」と考えているケースがあります。

しかし実際の審査では、指揮命令の所在、勤怠管理、業務指示の出し方など、書面の契約名目よりも「実態」が重視される傾向があります。 つまり、“契約書上は請負、実態は派遣(客先から直接指示を受けている)”になっていないかは非常に重要です。これは入管への説明だけでなく、労働者派遣法などに抵触する「偽装請負」という違法状態を疑われるリスクにもつながるため、コンプライアンスの観点からも見過ごせません。

最近は「勤務場所」も見られるケースがある

近年は、どこで働くのか、常駐か、リモートワークか、現地の指導体制はどうなっているかなど、勤務実態の解像度を上げて確認されるケースも見られます。特に、「雇用企業(派遣元・SES元)との関係性や、会社側からの管理体制が薄い」と見られてしまう場合は注意が必要です。

企業側が今やるべきこと

①業務内容を具体化する

「IT業務」という一言で片付けるのではなく、何を作るのか、どの技術を使うのか、どの工程を担当するのかまで社内で整理しておくことが重要です。

② 契約と就労の実態を確認する

特に、誰が指示を出し、誰が評価し、誰が勤怠管理をしているのか。これらが契約形態と矛盾していないか、実態に合わせて整理しておく必要があります。

③ “単純作業化”していないか確認する

長期間同じ現場に常駐していると、現場の状況によって、いつの間にか雑務や現場補助、店舗支援などに回されてしまうケースがあります。ビザの更新時に問題化することが多いため、定期的な社内確認が重要です。

「派遣型・SES=危険」ではない

ここで誤解しないことが重要です。 IT業界を中心に、客先常駐型のSESや、労働者派遣法に基づく派遣型エンジニアという働き方は、日本社会で広く、かつ適正に利用されています。

問題になるのはあくまで、「在留資格で認められた専門業務(および本人の専攻)と、現場での実態が一致しているか」です。 つまり、専門性、契約実態、指揮命令関係、業務内容を正しく整理し、証明できている企業であれば、適切に許可を得て安定して運用できています。

まとめ

“契約書”の文字よりも、「実際に何をしているか」が重視される時代へ

近年の技人国審査では、実際の働き方、専門性、業務の割合、指揮命令関係など、実態の確認がより重要になっている印象があります。

特に派遣型・SES型では、「契約上どう書いているか」だけではなく、「実際にどんな働き方をしているか」まで明確に説明できることが重要です。 更新時や追加資料の提出要請(理由書など)で慌てないためにも、日頃から在留資格との整合性を確認しておくことが、今後ますます重要になっていくと考えられます。


派遣型技人国・SES外国人雇用のご相談について

当事務所ではでは、

  • 技人国ビザの該当性確認
  • SES・客先常駐案件の整理
  • 業務内容のレビュー
  • 更新リスク診断
  • 追加資料(理由書)対応

などを行っております。 特に最近は、「この働き方は今の基準で問題ないのか?」というご相談が増えています。

外国人雇用を、“とりあえず許可が出ればよい”ではなく、“更新まで見据えて安定運用する”形に整備していきたい企業様は、どうぞお気軽にご相談ください。