「特定活動」と書かれているのに内容が全然違う?

― 実は数十種類ある特定活動を整理してみた ―

はじめに

外国人の方や、初めて外国人を採用する企業の担当者様からご相談を受けていると、よくこんな会話になります。

「在留資格は何をお持ちですか?」 「在留カードには『特定活動』って書いてあります!」

「なるほど、特定活動ですね」と引き取って、念のために詳しく状況を深掘りしていくと、

  • 絶賛、就職活動中の方
  • 日本の大学や専門学校を卒業してバリバリ働いている方
  • ワーキングホリデーで日本を満喫している方
  • 海外の大学からインターンシップで来ている方

などなど、みなさん全くと言っていいほど状況が違うのです。 実は、「特定活動」という在留資格は、一つの決まった制度を指す言葉ではありません。いわば「他のビザに当てはまらない活動をまとめて引き受ける、オーダーメイドの在留資格」のようなものです。

今回は、実務でも特によく遭遇する「特定活動」の正体について、分かりやすく整理してみたいと思います。

そもそも「特定活動」ってなに?

日本の就労ビザ(在留資格)には、「技術・人文知識・国際業務」や「経営・管理」など、それぞれ「日本でやっていいこと」が法律でカチッと決められているものがほとんどです。

しかし、時代の変化とともに「これまでのビザの枠には収まらないけれど、日本への滞在を認めてあげたいケース」がどんどん出てきます。 だからといって、新しい国境を越えた働き方や国際交流が生まれるたびに、法律(入管法)をいちいち改正して新しいビザを作るのは、どうしても時間がかかってしまいます。

そこで登場するのが「特定活動」です。 これは法務大臣が「あなたには、この活動を行うことを条件に日本にいていいですよ」と個別に指定する仕組みになっています。そのため、中身を開けてみると、実は数十種類もの全く異なる「活動の類型」が存在しているのです。


「告示」にあるもの、ないものの違い

特定活動は、大きく分けると「告示(こくじ)特定活動」と「告示外(こくじがい)特定活動」の2つに分類されます。専門用語のようですが、中身はシンプルです。

① 告示特定活動(あらかじめ国がルールを決めているもの)

法務省が「こういう活動をする人は特定活動として認めます」と、あらかじめ番号付きでルールを公開しているものです。
代表例としては、後述する「特定活動46号」やワーキングホリデー、インターンシップなどがあります。条件をしっかりクリアしていれば、比較的予測が立てやすいルートです。

② 告示外特定活動(個別の事情を考慮して臨機応変に出されるもの)

国のルールブック(告示)には載っていないけれど、人道的な理由や個別のやむを得ない事情を考慮して、入管が裁量で許可を出すものです。 例えば、「高齢になった本国の親を日本に呼び寄せて扶養したい」というケースや、諸事情でビザの切り替えが間に合わなかった場合の「出国準備のための滞在」などがこれに当たります。

このように、同じ「特定活動」でも、国が決めたパッケージツアーのようなものから、完全な個別特例までグラデーションがあるのが特徴です。

実務でよく見かける5つの特定活動

企業の採用現場や相談窓口で、特に出会う確率の高い5つのパターンを見ていきましょう。

1.特定活動46号(日本の大学・専門学校の卒業生)

前の記事にも書きましたが、ここ数年、企業の採用現場で特に注目されているのがこれです。 日本の大学・大学院だけでなく、近年の法改正によって一定の要件を満たす専門学校を卒業した方も対象に加わりました。高い日本語能力(日本語能力試験N1など)を持っていることが条件になります。

一般的な就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)では「単純作業」とみなされて許可が降りにくい、ホテルや小売業での接客・販売、製造現場での指示出しなども、この46号であれば認められるケースがあります。 ただし、「何でも屋」として雇えるビザではありません。派遣や請負は原則NGですし、業務の中に「日本語を使ったスムーズな意思疎通」がしっかり含まれている必要があります。

2.就職活動の継続(元留学生)

留学生が卒業したものの、まだ日本での就職先が決まっていない場合に、卒業後も残って就活を続けるためのビザです。
春先になると当事務所でも一気に相談が増える類型ですね。学校側の推薦なども必要になります。

3.内定者向け(入社を待っている状態)

「就職先は決まったけれど、入社時期が先」という場合に活躍するビザです。
例えば、9月に大学を卒業して、企業の秋採用や翌年4月の一斉入社を待つようなケースが代表例です。せっかく内定を出した優秀な人材を、入社までの空白期間のせいで帰国させずに済むため、企業の採用スケジュールを守る上でとても重要な役割を持っています。

4.ワーキングホリデー

若い方が、日本で旅行や文化交流を楽しみながら、その滞在資金を補うために一時的に働くことができる制度です。
「働いているから就労ビザ」と思われがちですが、目的のメインはあくまで「異文化交流や観光」です。そのため、一般的な会社員としての採用とは性質が異なります。

5.デジタルノマド

海外の企業に籍を置いたまま、日本でおしゃれにリモートワークをするフリーランスや会社員向けの、比較的新しい制度です。年収1,000万円以上などハードルは高めですが、海外の優秀なIT人材などの間で少しずつ認知が広がっています。

※企業の採用担当者の方へ、ここで一つマニアックですが超重要な注意点があります。 このデジタルノマドの特定活動(滞在期間は最長6か月)の外国人は、特例として「在留カード」が発行されません。「ビザがある」という証明は、パスポートにペタッと貼られるスタンプ(証印)だけになります。もし採用や契約の場で「在留カードを見せて」と言っても持っていませんので、慌てずにパスポートを確認してくださいね。


「特定活動だから働けます!」を鵜呑みにしてはいけない理由

実務上、最もトラブルが起きやすいのが、外国人本人や採用担当者が「特定活動=働けるビザ」と思い込んでしまうケースです。

ここまで見てきた通り、特定活動はその種類によって、

  • フルタイムでガッツリ働いていいもの(特定活動46号など)
  • 週28時間以内のアルバイトならOKなもの(就職活動や内定待機など ※事前の許可が必要です)
  • そもそも働くことが一切認められていないもの

に完全に分かれます。 つまり、在留カードの表面の「特定活動」という文字を見ただけでは、その人が「何をしていい人なのか」は1ミリも判断できないのです。

企業の採用担当者が必ず確認すべき「指定書」

では、どこで見分けるのかというと、外国人のパスポートのどこかのページにホチキス留め(または貼付)されている、「指定書」と呼ばれる四角い紙です。

ここには、その外国人が日本で行っていい活動内容が日本語で細かく書かれています。 企業が特定活動の外国人を採用する際は、在留カードの表面だけでなく、必ずパスポートを開いてもらい、この「指定書」の原本を確認する必要があります。ここを確認せずに「特定活動だから大丈夫だろう」と採用してしまうと、会社側が「不法就労助長罪」という重いペナルティに問われるリスクがあります。

まとめ

一口に「特定活動」といっても、その中身は千差万別。十人十色の事情が隠されています。 だからこそ、「特定活動だからこうだ」と一律に決めつけるのは、外国人本人にとっても、受け入れる企業にとっても非常に危険です。

「この在留カードの表記で、本当にうちの仕事を手伝ってもらえるのかな?」 「来月卒業なんだけど、このまま日本で就活を続けるにはどうすればいい?」

そんな不安や疑問が浮かんだら、自己判断で進めてしまう前に、ぜひ一度お気軽に当事務所までご相談ください。最新の法改正や入管のリアルな動向を踏まえ、スムーズな手続きをサポートいたします。

※本記事は掲載日時点の法令・制度および公表情報に基づいて作成しています。法改正や入管の運用変更等により内容が変更される場合がありますので、具体的な手続にあたっては必ず最新情報をご確認ください。