外国人社員が1年以上海外勤務になったら?

― 再入国許可と在留資格の落とし穴 ―

はじめに

海外拠点の立ち上げや子会社への出向などで、「外国人社員をしばらく海外勤務にしたい」という相談が増えています。日本企業のグローバル化に伴う自然な流れですが、人事担当者や本人が見落としがちなのが「在留資格(ビザ)を維持できるか」という問題です。

「在留カードの有効期限が残っているから大丈夫」という思い込みは禁物です。長期間の海外勤務における、再入国手続と在留資格の注意点を解説します。


在留カードが有効でも安心できない理由

前提として、「在留カードの期限内であること」と「日本に再入国できること」は別問題です。出国時に適切な手続を行わないと、これまで保有していた在留資格そのものを失うことになります。

① 「みなし再入国許可」の1年の壁と在留期限

現在、海外出張や一時帰国の多くは、出国から1年以内に再入国することを前提とした「みなし再入国許可」が利用されています。

しかし、海外赴任が1年を超える場合、この制度は使えません。さらに注意が必要なのは、「出国から1年以内」であっても、手持ちの在留期間の満了日がそれより先に到来する場合は、その満了日までに再入国しなければならないという点です。

② 1年を超えるなら「再入国許可」の取得を

海外子会社への出向など、赴任が1年を超えることが見込まれる場合は、出国前に必ず入管で通常の「再入国許可」を取得してください。在留期間の範囲内で、最長5年(※保有している在留期間が上限)まで認められます。


実はもっと深刻な「活動実態」と「取消リスク」

ここが実務上、最も見落とされやすいポイントです。 在留資格は「日本国内における活動」を前提とした制度です。入管法上、正当な理由なく3ヶ月以上、在留資格に応じた活動(日本での就労など)を行っていない場合、在留資格の取消対象になります。

業務命令による海外赴任は一定の考慮がなされるケースもありますが、数年単位で日本を不在にする場合、そもそも「日本に在留する資格」の前提が失われていると判断され、一時帰国時や更新時に深刻なトラブルになるリスクがあります。


永住申請を考えている方はさらに注意

将来的に永住申請を予定している社員がいる場合、海外赴任は大きな障壁になります。 永住審査では居住の「継続性」が厳しく見られます。目安として、1回で3ヶ月以上の長期出国、または年間で合計100日前後以上の海外滞在があると、継続居住の起算点が変わる可能性が極めて高いのが実態です。会社の業務命令であっても原則として例外は認められません。

企業担当者が確認すべきチェックリスト

外国人社員を海外赴任させる際は、事前に次の項目を確認してください。

  • 海外勤務期間は1年を超える予定か(超えるなら通常の再入国許可が必要)
  • 在留期限はいつまでか(赴任中に期限が切れないか)
  • 日本法人との雇用関係は維持されるか
  • 本人が将来的に永住申請を予定していないか

「いつか日本へ戻る予定だから大丈夫」という主観的な見通しは入管には通用しません。手続を怠った結果、再度ビザの呼び寄せ(在留資格認定証明書交付申請)からやり直さざるを得なくなったケースもあります。

海外勤務が決まった段階で、早めにスケジュールと手続を確認することが大切です。

海外赴任に伴う在留資格の管理や、永住申請への影響でお困りの際は、ぜひ当事務所へご相談ください。実務経験に基づき、個別ケースに応じた最適な解決策をご提案いたします。

※本記事は掲載日時点の法令・制度および公表情報に基づいて作成しています。法改正や入管の運用変更等により内容が変更される場合がありますので、具体的な手続にあたっては必ず最新情報をご確認ください。